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鬼平深読み帳

平蔵や忠吾の好物、一本饂飩!

第9シリーズ第4話「一本饂飩」は、木村忠吾が行方不明になり、同心や密偵たちが総出で彼の行方を捜すお話。忠吾は馴染の『豊島屋』で盗賊の寺内武平衛と出会い、彼の一味にさらわれたことが分かる。兇賊・蛇の平十郎(「蛇の眼」)や猫間の重兵衛(「迷路」)など、シリーズで印象的な盗賊を演じてきた石橋蓮司が、ここでは男色の盗賊に扮して怪演しているのが楽しい作品である。

劇中で忠吾と寺内武平衛が深川蛤町の『豊島屋』で食べているのが、名物の“一本饂飩”。これは原作に何度も登場する、鬼平ファミリーには馴染み深い一品。平蔵は悪さをしていた若い頃、本所・深川で3日にあけず一本饂飩を食べていたと原作『壞掘のおけい』の中で同心たちに語っているし、五郎蔵も盗賊時代の手下に会って、この饂飩を一気に3杯も食べたという記述が出てくる。平蔵や五郎蔵にとっては若い頃から食べていたソウルフードの一つであり、食いしん坊の忠吾にとっては市中見回りのついでに食べる好物でもある。また原作の『一寸の虫』では、密偵の仁三郎が『豊島屋』で一本饂飩を食べているときに、昔の盗賊仲間・鹿谷の伴助と出会うのだ。そういう意味でもこれは、ドラマを生み出す印象的な料理と言える。

では一本饂飩はどういうものかと言えば、人差し指ほどの太さのある蛇のように長い饂飩で、一本が一人前のものを釜揚げにして客に出す。また作るときには一晩寝かせて強いコシを引き出し、太すぎてとてもすすりこむことが出来ないので、箸で千切りながら汁につけて食べていく。その食べ方は、原作の平蔵流にいえば“好みによって柚子や摺胡麻、葱をあしらった濃い目の汁につけて食べる”のだそうな。原作が発表された当時は失われた江戸の味になっていて、幻のメニューと言われた一本饂飩だが、今ではこれを出す店もいくつか出てきた。噛みごたえのある饂飩を食しながら、平蔵や忠吾の気分を味わってみるのも一興である。