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鬼平深読み帳

「一本眉」との違いも楽しみたい、「墨斗の孫六」に注目!
 

第6シリーズ第4話「墨斗の孫六」は、幼い息子のために最後の大仕事に挑む本格派の盗賊・墨斗の孫六が、おまさや伊三次、さらに平蔵までも仲間に引き入れて押し込みを決行する物語。孫六は両親を病気で亡くしていて、自分も発病するのではないかという恐怖に怯えている。鬼平ファンならその設定にピンとくるだろうが、これは第1シリーズと後のスペシャルに登場した「一本眉」と同じ原作を基にしている。「一本眉」ではさらに、配下の倉淵の佐喜蔵の裏切りが絡んで物語が展開していく。第1シリーズでは“一本眉”こと清洲の甚五郎が、瀕死の蝶に死病に憑りつかれた自分を重ね合わせたが、ここでは孫六が枯れた菊に自分を重ねる。また彼を助ける盗賊が第1シリーズではおまさと粂八、こちらはおまさと伊三次で、その微妙な描き方の違いに注目して観るとさらに面白いだろう。

演じる俳優に目を向けると孫六を演じた内藤武敏は鬼平シリーズには欠かせない、個性的なゲストを多数輩出した劇団民藝の創設メンバーの一人。第1シリーズ「一本眉」で甚五郎を演じた芦田伸介もまた元民藝で、本格派の盗賊には民藝の役者が似合うようだ。さらに深く観ていけば、スペシャルの「一本眉」で甚五郎を演じたのは宇津井健。芦田伸介は刑事ドラマのパイオニア「七人の刑事」(61〜69、78〜79)で人気を集めた俳優だし、宇津井健はやはり60年代の警備会社のガードマンたちが活躍するアクションドラマ「ザ・ガードマン」(65〜71)でスターの座を確立した。「ザ・ガードマン」には五鉄の三次郎こと藤巻潤もレギュラー出演していたが、芦田伸介と宇津井健という60年代に世の正義を代表する役柄で人気を得た二人が、同じ盗賊役を演じたのは奇縁というべきか。孫六役の内藤武敏も含めて、彼らの落ち着いた演技は見る者を惹きつけ、特に友情で結ばれる平蔵とのやり取りは、どのエピソードでも見せ場の一つになっている。その名優たちの見事な存在感を堪能していただきたい。