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鬼平深読み帳

個性派の名優の宝庫。ゲストで登場する『民藝』の俳優達

第5シリーズの「蛙の長助」は、元盗賊の借金取り・蛙の長助と平蔵との触れ合いをメインに描いた作品。長助を演じるのは第1シリーズ「兇賊」に出てくる居酒屋の亭主・鷺原の九平役でファンにはお馴染み、米倉斉加年である。「兇賊」では店で出す“芋酒”に関して、客の平蔵と九平が話し込む場面が印象的だったが、今回も猫田孫兵衛の変名を使って長助に近づく平蔵との、絶妙の掛け合いが見ものとなる。事あるごとに“知りてえか”と口癖を言う長助はどこか飄々として憎めない老人で、米倉と中村吉右衛門の名優二人が作り出すコミカルな雰囲気が楽しい。

『鬼平犯科帳』シリーズには歌舞伎界からは勿論、映画やTVのスター、あるいは芦屋雁之助や財津一郎といった喜劇俳優まで、多彩なゲスト俳優が登場するが、米倉斉加年は『劇団民藝』の出身(2000年に退団)。民藝には宇能重吉や滝沢修を筆頭に多くの名優が揃っていたが、その所属俳優たちは華やかなスターというよりは個性的な演技派というイメージが強い。シリーズには米倉斉加年の他にも、平蔵とは若い頃から知り合いの“笹やのお熊”に扮した北林谷栄(第1シリーズ)、第9シリーズの「大川の隠居」で船頭・浜崎の友蔵に扮して、渋い船頭唄も聴かせてくれる大滝秀治などの民藝の俳優たちが登場した。彼ら民藝の俳優たちは誰もが生活者としてのリアリティがあり、ゲストで登場すると忘れ難い余韻を残す。

またともに70年に退団しているが第1シリーズ「一本眉」の芦田伸介、第6シリーズ「墨斗の孫八」の内藤武敏も元民藝の俳優。そして何と言っても忘れてはいけないのが、大滝の五郎蔵役の綿引勝彦。シリーズが始まる前の85年に退団しているが、68年から17年間所属していた民藝は、彼の俳優としての原点。黙っていてもその裏にある情感を滲ませる五郎蔵の演技が、民藝で培われたことを思うと、さらに興味が深まるのではないか。