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鬼平深読み帳

『鬼平犯科帳』以外の短編小説を映像化した、池波作品も魅力!

『鬼平犯科帳』には、シリーズ作品以外に盗賊を扱った池波正太郎の短編小説を原作にしているものがある。第4シリーズで言えば「正月四日の客」、「鬼坊主の女」、「さざ浪伝兵衛」が、いずれも『にっぽん怪盗伝』に収録された短編が原作。この短編集は68年の1月に出版されていて、『鬼平犯科帳』の第1巻の発行は同年12月。いわば池波にとって、この短編集は“鬼平”連載直前に書かれた盗賊物の習作集であったのだ。それだけに世界観は、“鬼平”に通じる部分が多い。これらが原作としてドラマ・シリーズに取り入れられたのは、69年に放送が始まった松本白鸚主演版「鬼平犯科帳」の製作当時、連載中の原作だけでは映像化するのに数が足りなくなったという裏事情もある。また当時の脚本には池波本人が江戸言葉の言い回しなどに自ら朱筆を入れていて、つまりは原作者監修の脚本が使われた。プロデューサーの市川久夫はその脚本を大事にして、その後丹波哲郎、萬屋錦之介、中村吉右衛門と主演俳優が代わっても、松本白鸚版の脚本をベースにリメイクしていった。要するにこれらのシリーズ以外の原作作品は、初代・松本白鸚版からの遺産という言うべきエピソードなのである。

第1シリーズから『鬼平犯科帳』以外の原作を映像化したものを拾っていくと、第1シリーズでは「金太郎そば」、「雨の湯豆腐」(原作=「梅雨の湯豆腐」)、第2シリーズでは「四度目の女房」、「夜狐」、第3シリーズでは「熊五郎の顔」、「おみよは見た」、第5シリーズでは「市松小僧始末」、第6シリーズでは「男の毒」、第7シリーズでは「あいびき」(原作=「おせん」)などがそれにあたる。いずれも原作小説には“鬼平”が登場しないのでアレンジを加えているが、まったく違和感なく観られるのは脚本の上手さ。実は第5シリーズには、原作小説が存在しない完全なオリジナル「お菊と幸助」というエピソードが登場するが、この物語誕生についてはまたいずれ書く機会があるだろう。