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鬼平深読み帳

池波正太郎から芸名をもらった、火野正平が「一寸の虫」に出演!

第9シリーズ第2話「一寸の虫」は密偵の仁三郎が、命を捨てても恩義に報いたい二人の恩人、平蔵と盗賊・船影の忠兵衛の間で苦悩する物語。忠兵衛の命を狙うかつての盗賊仲間・鹿谷の伴助から盗みの話を持ちかけられた仁三郎は、一人で忠兵衛を救う手だてを探っていく。確かなことを密偵仲間にも言えない仁三郎の心中を察した、おまさや五郎蔵の言葉が胸に響く作品になっている。

この作品で仁三郎を演じたのが火野正平。平蔵を銃で狙う盗賊の銃弾を身代わりになって受ける冒頭から、恩義を忘れない一途な男のストイックな生き方を見事に表現している。銃弾で受けた傷を養生するため床に臥せっている彼に、おまさが淹れてくれた茶を飲むシーンの、人への感謝の気持ちが全身からあふれ出てくるような演技は秀逸。五郎蔵に『始末のつかねえことは始末がつかねえ。俺はいざという時には、一切のことを長谷川さまに預けることにしている』と密偵としての心構えを言われて自分の心を決め、悩みから解放されたような笑顔を見せる場面も印象的だ。火野正平は『鬼平犯科帳』シリーズでは、他にスペシャルの「一本眉」と「高萩の捨五郎」にもゲスト出演。また藤田まこと主演の『剣客商売』シリーズにも2度出ているが、彼と原作者・池波正太郎にはちょっとした縁がある。火野正平は児童劇団から俳優を始め、その当時は本名の二瓶康一を名乗っていた。だが73年、NHK大河ドラマ「国盗り物語」で主人公・織田信長の家来・木下藤吉郎役に抜擢されて、現在の名前に改名。この時NHKから“太陽が昇るような力強い名前を”という要望を受けて、火野正平という名前を考えて命名したのが池波正太郎だったとか。つまり彼の“正”の字は、池波正太郎から一文字もらったものなのだ。池波正太郎が思いを込めて付けた名前を持つ俳優が、池波文学のキャラクターを演じる。そこにまた、味わい深さが感じられる作品だ。