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鬼平深読み帳

勝新太郎、市川雷蔵作品の名匠・田中徳三監督による「一本眉」!

第1シリーズ第10話の「一本眉」は、かつて自分の片腕だった倉淵の佐喜蔵に裏切られた本格派の盗賊・清洲の甚五郎が、その落とし前をつけようとする物語。平蔵と知り合った甚五郎が、平蔵に作ってもらった粥を食べながら自分の過去を語る場面など、芦田伸介が死病に憑りつかれた老盗賊の胸の内を、哀愁たっぷりに表現した名編である。

第1シリーズ全26話は1969年に先代・松本白鸚が主演した最初の『鬼平犯科帳』シリーズから参加しているメイン監督、小野田嘉幹(映画会社は新東宝出身)と高瀬昌弘(東宝出身)の二人で15本を手掛けているが、目を惹くのがこの「一本眉」と第5話「血闘」を監督した田中徳三。かつて大映に所属していた田中監督は、勝新太郎の『悪名』、『兵隊やくざ』、『座頭市』の3大シリーズを始め、市川雷蔵の『眠狂四郎』シリーズも担当したプログラム・ピクチャーのベテラン。TVでも松本白鸚版の『鬼平犯科帳』を数話手掛けていて、その内の「下段の剣」には若き日の中村吉右衛門も出演している。他にも加藤剛主演版の『剣客商売』シリーズや91年に萬屋錦之介が主演した「雲霧仁左衛門」など、池波作品との関わりも深い。田中監督の演出のうまさは、たとえそれが1時間もののTV作品であっても、印象に残る名シーンを作り上げるところだ。「一本眉」では障子にぶつかって外に出られなくなった瀕死の蝶に、甚五郎がいつ死ぬか分からない病を持つ自分の姿を重ね合わせる場面がそれで、命のはかなさとそれが燃え尽きるまでに佐喜蔵との落とし前をつけようとする、願いにも似た甚五郎の気持ちが蝶に込められている。田中監督はこの「一本眉」が最後の“鬼平”監督作になったが、シリーズの歴史を語る上で欠かせない名編を遺した。また第1シリーズには大映の助監督で、その後TV「木枯し紋次郎」などで知られた大洲斉も「あきれた奴」や「浅草・御厩河岸」を監督していて、このシリーズには大映時代劇の血脈も息づいているのである。