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鬼平深読み帳

おまさ役に打ち込んだ、梶芽衣子の原点「血闘」

第1シリーズ第5話「血闘」は、密偵のおまさが初登場するエピソード。おまさは盗賊・吉間の仁三郎一味で引き込み女をしていたが、急ぎばたらきをする仁三郎に嫌気がさし、自ら密偵になることを志願。しかしそれが仁三郎に知れて攫われてしまい、平蔵が単身助けに行く。ここで仁三郎の盗人宿に乗り込んだ平蔵は、15人を斬って捨てる。第1シリーズでは平蔵が剣豪としての強さを見せる話も多く、「兇賊」では10人を倒し、「兇剣」では京都西町奉行所与力の浦部彦太郎とたった二人で、高津の玄丹率いる浪人集団に立ち向かった。また「血闘」で平蔵がおまさを守るために仁三郎へ言い放つ“貴様ら外道の刀で、あの女の色が斬れるか”という啖呵は、シリーズ中の名セリフの一つだ。

このエピソードでおまさは、平蔵と20余年ぶりに再会したことになっている。若き平蔵がおまさの父・鶴の忠助が営む“盗人酒屋”に通っていた頃、店の手伝いなどをしていたおまさは10~11歳だったというから、再会したときは30代半ば。演じた梶芽衣子は41歳の時に、初めてこの役を演じた。以来シリーズが終了するまでの28年間、劇中のおまさを初登場のイメージそのままに演じ続けたのは、さすがというべきだろう。先日あるTV番組で梶芽衣子は11種類の歯ブラシを使い、20分かけて歯を磨くという話をしていたが、そこまで入念に歯の手入れをするのは入れ歯などになって、セリフが明晰に言えなくなるのが嫌だからだとか。また平蔵の役宅に報告に来て、庭先にしゃがむ動作などをスムーズに行えるように、肉体のトレーニングも欠かさなかったという。プロの女優として、自分をベストの状態を保つために日々心掛けているその姿勢は、どこか本格派盗賊の一味としてプライドを持って生きてきた、おまさの精神性にも通じる。一つのキャラクターに打ち込むことで、役と演じ手の生き方が一体となる。その凄みが、おまさの演技からは感じられるのだ。