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鬼平深読み帳

「眼鏡師市兵衛」は、無口な蕎麦屋の親父に注目!

第8シリーズ第4話「眼鏡師市兵衛」は、元蓑火の喜之助一味だった眼鏡屋・市兵衛のところに、昔の仲間・三雲の利八がおつとめを助けてほしいと言ってきたことから、市兵衛の運命が変わっていく物語。市兵衛に扮した名優・加藤武が足を洗った盗賊の苦悩を、見事に表現している。ここで注目したいのが、彦十と木村忠吾が市兵衛の店を見張るために使う蕎麦屋。その店の親父を演じているのは、映画監督の工藤栄一なのだ。

工藤監督と言えば63年公開の「十三人の刺客」に代表される東映の集団時代劇によって、時代劇の世界に新たな風を吹き込んだ鬼才。その光と影のコントラストを活かした映像美も人気があり、池波正太郎作品では95年の山ア努主演版「雲霧仁左衛門」で監督を務めている。実は俳優としても相米慎二監督の「魚影の群れ」(83)、柳町光男監督の「火まつり」(85)、神代辰巳監督の「恋文」(85)、そして松田優作が監督した「ア・ホーマンス」(86)などの映画にチョイ役だが出演。ここでも蕎麦屋の無口な料理人を、存在感たっぷりに演じている。工藤監督は2000年に亡くなっているので、これは最晩年の彼の姿が見られる貴重な作品でもある。

映画監督で俳優と言えば、映画「ツィゴイネルワイゼン」(80)でその年の映画賞で助演賞を総なめにした藤田敏八、「御法度」(99)で新選組の近藤勇に扮した崔洋一、宮崎駿監督の「風立ちぬ」(13)で主人公の声を演じた庵野秀明、その庵野の監督作「式日」(00)に主演した岩井俊二など、意外な名演を見せる人が多い。また通常監督は表に出てこないことが多いので見た目の新鮮さもあり、キャスティングの仕方によっては作品に魅力が加わる。ここでの工藤監督はその好例だろう。『鬼平犯科帳』には「鬼坊主の女」のガッツ石松(元ボクサー)や、「市松小僧始末」の長与千種(元プロレスラー)など、異色のキャストも登場してきた。本格時代劇でありながら、“守り”に入らないその大胆なキャスティングもまた、シリーズの魅力なのだ。