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鬼平深読み帳

“しじみ”好きの盗賊を見事に演じた、名優・本田博太郎

第7シリーズ最終話「見張りの見張り」は、息子を盗賊・杉谷の虎吉に殺された老盗・長久保の佐助が、かつて粂八の仲間だった虎吉の消息を知るために粂八を尾行し、その佐助を同心たちが尾行するという、タイトル通り“見張りの見張り”が思わぬ展開を見せる物語。佐助は“しじみ”が大好物で、宿に泊まっても“しじみの煮付け”や“しじみ汁”など、しじみ尽くしの料理を欲しがる。その佐助がラスト、平蔵の好意によって猫どのが作った“しじみ汁”を、涙を浮かべながら飲む場面が印象深い。しじみは“深川めし”のあさりとともに江戸庶民の料理には欠かせない貝で、『鬼平犯科帳』にも、第2シリーズの「熱海みやげの宝物」や第3シリーズ「忠吾なみだ雨」に“しじみ汁”が登場している。

今回のエピソードで、息子の仇を討つために己の命を賭ける長久保の佐助を演じているのが、本田博太郎。彼は他に第1シリーズ「浅草・御厩河岸」、第4シリーズ「密偵」、第6シリーズ「男の毒」、第9シリーズ「大川の隠居」、スペシャルの「兇賊」や「見張りの糸」にも出演している。「浅草・御厩河岸」や「密偵」では、盗賊だった過去のしがらみによって運命が狂っていく、密偵の人生の影の部分を見事に表現していたが、「見張りの糸」では今は引退した盗賊・堂ヶ島の忠兵衛の手下で、表の顔は番頭の太助に扮し、こちらではコミカルな役を軽妙に演じた。今回の佐助は元蓑火の喜之助の手下だった男だけに、捕縛されてからは潔く刑に服す覚悟を決め、平蔵の前で見せる折り目正しい佇まいなど、本格派の盗賊になりきった名演を披露している。また本田博太郎は“鬼平”以外にも藤田まこと版の『剣客商売』や山崎努が主演した『雲霧仁左衛門』、あるいは岸谷五朗主演のスペシャルドラマ『仕掛人・藤枝梅安』などの池波正太郎作品に出演。彼のようにシリアスからコメディまで演じ分けられる、池波正太郎の世界を熟知した名優がいるからこそ、作品が見応えのあるものになるのだ。