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鬼平深読み帳

火付け犯人を取り締まるのも平蔵の大きな役目!

『鬼平犯科帳』の主人公・長谷川平蔵は、火付盗賊改方の長官である。物語は盗賊との攻防がメインとなるため、放火犯を取り締まる話は第3シーズンの「火つけ船頭」くらいで、さほど多くない。だが捕物に出張るときの平蔵の扮装は火事装束で放火犯の逮捕は、ある意味盗賊を捕縛する以上に重要であった。それが分かるのが明和9年(1772年)に起こった江戸の大火である。2月29日に目黒村行人坂の大円寺から出火した火事は、南西風にあおられて江戸城周辺の大名屋敷を灰にし、神田や下谷、浅草といった江戸庶民の町も焼き尽くした。火は翌日昼にいったん収まったが、翌3月1日に再び火の手が上がり、日本橋周辺を壊滅させた。この火事による死者は14700人、行方不明者はおよそ4600人で、被害の大きさは後の関東大震災に次ぐものとされている。この時平蔵は20代半ばで、当時火付盗賊改方を束ねていたのは彼の父親・長谷川平蔵宣雄。この大火は放火が原因で、宣雄は犯人の長五郎坊主真秀を4月22日に逮捕。宣雄はこの手柄によって、この年10月に京都町奉行に抜擢されるという出世を遂げている。いかに放火犯を捕えることが大事だったかが、このことでもわかるだろう。

また時代劇として観ると、クライマックスに火事装束で盗賊と立ち回りを演じる平蔵には、『忠臣蔵』の赤穂義士のイメージがダブる。実際の赤穂の義士たちが吉良上野介を討つ時に火事装束ではなかったというのは今や定説だが、ビジュアルイメージとしては江戸時代から火事装束が定番。これは松の廊下で吉良に斬りつけた赤穂藩の藩主・浅野内匠頭長矩の祖父・長直が、大名火消として非常に功績があり、赤穂の殿様さえ出張れば火事が収まるとまで言われたことが一つの要因とされている。つまり赤穂の侍=火消しのプロ=火事装束というイメージの流れが出来ていて、歌舞伎などでは赤穂義士たちの正装に選ばれたのだ。これを平蔵に当てはめてみると、赤穂義士=火事装束=平蔵という連鎖から、彼は権力の側にいながら世の不正をただす人というイメージが観る者の中に刷り込まれているのではないか。だからこそ平蔵は、時を超えたヒーローであり得ているのかもしれない。