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鬼平深読み帳

獣のような兇賊・葵小僧を怪演した、島木譲二に注目

『鬼平犯科帳』には個性的な盗賊が次々に登場するが、そのほとんどは原作者・池波正太郎の創作。だが第7シリーズ「妖盗葵小僧」に出てくる“葵小僧”は実在した盗賊で、長谷川平蔵が寛政3年に捕縛したとされている。史実の葵小僧は徳川将軍の御落胤・葵丸と自称して、葵の御紋が付いた駕籠に乗って犯行に及んだという。またその手口は残忍で、押し入った商家の女房や娘を凌辱した、畜生ばたらきの兇賊だ。原作やドラマでも女を犯す手口は一緒だが、原作の葵小僧の前身は役者に設定され、その声色使いが捕縛のヒントになっている。原作では鼻が低くて役者としては人気のなかった葵小僧が、盗賊になってからは付け鼻をして自分を二枚目に見せようとしていた。ドラマ版の葵小僧は獣のような醜男に描かれ、容姿のコンプレックスから女を犯していったことになっている。

その獣のような葵小僧を演じたのは昨年12月に惜しくも亡くなった、“パチパチパンチ”や“ポコポコヘッド”のギャグで知られる、吉本新喜劇の人気芸人・島木譲二。『鬼平犯科帳』シリーズでは、松本白鸚版の時に木村忠吾を演じた落語家・古今亭志ん朝を始めとして、中村吉右衛門版でも相模の彦十に扮した声色芸人・江戸家猫八、第2シリーズ「熱海みやげの宝物」のいかりや長介、第3シリーズ「隠居金七百両」の芦屋雁之助など、お笑い畑の芸人やコメディアンが登場してきたが、島木譲二ほど憎々しい悪党を演じた者はいない。彼が悪役に徹しているからこそ、クライマックスで平蔵が“お前みてえなうじ虫はな、お白洲に出る資格はねえ”というセリフが生きるのである。島木譲二は吉本興業に入る前、時代劇で斬られ役専門の俳優をしていたこともあるそうで、そういう意味でも悪役にはピッタリ。実はこの作品の前に、高倉健や松田優作が出演したリドリー・スコット監督作「ブラックレイン」にも日本のやくざ役で出演していて、ハリウッドも演技力を認めた俳優でもあった。その島木譲二入魂の演技を、是非観てもらいたい。