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鬼平深読み帳

見た目が決め手のキャスティングも面白い、「市松小僧始末」

第5シリーズ第4話の「市松小僧始末」は、『鬼平犯科帳』シリーズではなく池波正太郎の短編集『にっぽん怪盗伝』の一編を原作にしている。ここには大柄の上に力持ちで、婿のきてがない商家の娘・おまゆがヒロインとして登場するが、これがひょんなことから小柄なスリの市松小僧と深い仲になって、所帯を持つお話。池波正太郎は『仕掛人・藤枝梅安』シリーズに出てくる、元締・音羽の半右衛門と妻おくらの夫婦もそうだが、小柄な男と大女というカップルを作品に幾度か登場させてきた。ただおまゆもおくらも度胸があって力持ちなのだが、惚れた男に一途で女らしいところが共通していて、人は外見だけではわからないというのが、池波文学が常に読者へ投げかけるテーマの一つでもある。

「市松小僧始末」は『市松小僧の女』と題名を変えて池波自身の手で77年に劇化されたことがあるが、この時市松小僧を演じたのはTVや舞台で音羽の半右衛門も演じたことがある先代・中村又五郎。小柄な彼はまさにピッタリの配役だったが、『鬼平犯科帳』シリーズでは今回の春風亭小朝を始め、松本白鸚版では柴田p彦が、萬屋錦之介版の時には山田隆夫が市松小僧を演じ、どこか頼りないけれど愛すべきスリを好演している。注目すべきはおまゆのキャスティングで、市松小僧との体格差を観た目で分からせることができる女優はそうはいない。松本白鸚版では、大島渚監督の映画「白昼の通り魔」(66年)で主人公を演じ、その豊満な肢体で注目を浴びた川口小枝が、萬屋錦之介版では映画「卍」(83年)ではオールヌードで同性愛者に扮し、やはり豊満なボディが魅力的だった高瀬春奈がおまゆを演じた。今回のおまゆ役は女子プロレスラーの長与千種だが、見た目は勿論力持ちという部分も含めて、これまでのベストキャスティング。その彼女が市松小僧と出会ったことで、どう女らしく変貌していくのか。その辺のギャップに注目すると、また面白さが倍増する可愛らしいエピソードになっている。