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鬼平深読み帳

平蔵が舌鼓を打った、飯屋の料理とは?

第5シリーズ第1話「土蜘蛛の金五郎」は、遠藤太津朗演じる盗人の金五郎が平蔵殺しを目論んで、何とその殺しの依頼を浪人に化けた平蔵と岸井左馬之助に頼むお話。このエピソードから左馬之助を演じることになった竜雷太と平蔵の、金五郎を騙すための一騎討ちも見どころになっている。

物語の中で金五郎が隠れ蓑にしている表の商売は“どんぶり屋”という飯屋。一膳飯屋でも二十文はするというこの時代に、たった七文で飯が食い放題のこの店は大繁盛するが、それが逆に平蔵が金五郎を怪しむきっかけになる。飯屋が舞台となるため、美味しそうな惣菜料理も登場。平蔵が店の様子を探りに行った時に出されるのは『里芋と葱の含め煮』。また浪人に成りすました平蔵が金五郎の家で酒の肴にと勧められるのが『蒟蒻の白和え』だ。どちらもあまり手のかからない庶民の味だが、平蔵は美味しそうに舌鼓を打つ。鬼平の時代にはすでにたくさんの料理屋があったことが記録されているが、料理屋とは生簀に飼っている鯉の洗いを出すとか、長崎の卓袱料理を出すなど、即席では作れないコース料理を主体とした、予約が必要な高級店のこと。庶民は辻売りから屋台店、そして店舗へと姿を変えていった“煮売屋”を基本とする“食べ物屋”を愛用していて、平蔵や忠吾が探索の途中に立ち寄る多くは、気兼ねのいらない安価の“食べ物屋”である。平蔵の時代には上方を始め、地方から様々な料理が江戸へ入り込んでいたが、正調の江戸料理とはどんなものかといえば、基になっているのは武家料理。武家では盛り付けや味を吟味する役人がいるため、食べる人へ届くまでに時間がかかり、冷めても美味く食べられる料理が必要とされ、その味付けは剣術の稽古などで大量に汗をかくため、塩分が強め。一方では高級品だった砂糖をふんだんに使った、甘辛い味がもてはやされた。この武家料理の基本が庶民の生活にも根付いていったのである。平蔵が食べた煮物や白和えがどんな味だったかを想像しながら、このエピソードを観るのもいいのでは?