機能リンク
  • 加入申し込み
  • 会員登録
  • 番組表

鬼平深読み帳

着物や小道具の色に見える、本格時代劇のこだわり!

『鬼平犯科帳』を観ると、キャラクターによって着ている物の色味が違っていることに気付く。密偵だと小房の粂八や伊三次はいつもブルー系のパリッと糊が付いた着物を粋に着こなしているが、相模の彦十はグレーや茶系のよれよれの着物を着ていて、それで彼らの日頃の生活ぶりと年齢までもが推察される。同心でも遊び人の木村忠吾はブルーを基調にした明るい色の着物を着ることが多く、そこには彼の若さも表現されている。

では長谷川平蔵の色は何かと言われれば、それは“黒”。捕物に出張るときの火事装束は家紋が入った陣笠や羽織、愛刀・粟田口國綱の鞘、手に持つ十手の房まで、すべて黒色で統一されている。この黒の衣装が、盗賊どもを決して許さない彼の厳しさを象徴しているかのようだ。それだけではなく彼が愛用している湯呑の色も黒で、その内側は白地に青の線が一本入っている。愛用品で黒ではないものが、第1シリーズ「流星」にキーアイテムとして登場した銀煙管。これは平蔵が父・宣雄から形見として譲り受けたもので、雁首に凝った彫刻を施してある京都の職人に作らせた逸品。撮影に使われた煙管も特注品で、この煙管で平蔵が美味そうに煙草を吸うシーンはファンなら印象に残っていることだろう。

もう一つ忘れてはならないのが、白い徳利。軍鶏鍋屋『五鉄』の場面は勿論、シリーズに出てくる徳利は白の一合徳利に統一されている。これは番組を立ち上げたプロデューサー・市川久夫が原作者・池波正太郎と、池波が通った東京神田の須田町にある蕎麦屋『まつや』へ行ったとき、出てきた白い徳利を見て池波が“この徳利はいいねえ。時代劇だね”と言ったことにヒントを得て、番組用に特注して造らせた小道具。今出回っている一合徳利とは微妙にサイズも違い、手に持った感じが丁度いい大きさになっている。こういう小道具の作りや着物の色味への細かいこだわりが江戸の風情を醸し出し、さらには出てくるキャラクターの背景までも語る役割をする。そこに作品の奥深さがあるのである。